リモートワークリサーチ編集部です。今回は、”隠れ残業”をテーマに解説します!
企業経営をされる方や管理部門の皆様にとって『長時間労働』による労働問題や 従業員からの不満が溜まることは避けたいところです。しかし、長時間労働や”隠れ残業”が発生する原因を本質的に理解することは非常に難しいと言われております。
それは”一人当たりの業務が多すぎる”だけでは片付かない問題だからです。今回は”会社の従業員が、思わずやってしまう隠れ残業”への対策について解説します。
目次
『隠れ残業/ステルス残業』とは
隠れ残業やステルス残業という言葉をご存知ですか?隠れ残業(ステルス残業)とは、職場で用意されている勤怠システム等を利用して勤怠の打刻を行うが、打刻した時間以外に未申告の状態で、業務を行うことを指します。
具体的には、
・申告した残業時間以上に長時間、職場で働いていること
・休日や有給申請した日に自宅で作業を行う休日労働
・申告せずに、朝6時以前や夜21時以降で残業を行う深夜労働
などが該当します。
「顧客からメールでの連絡が来たから、ついつい土日の間に返信してしまう」「有給を取得したけど、上司から連絡が来たから多少の作業を行ってしまった」このようなタイミングで隠れ残業が発生してしまいます。
日本国内では新型コロナウイルスの蔓延により、在宅勤務やテレワークが行いやすい環境が構築されました。つまり隠れ残業の温床となります。自宅にPCや社用携帯を持ち帰ったり、自宅でVPNを接続することで会社のサーバーにアクセスできたりすることで隠れ残業がしやすくなっています。
皆さんにとって、ちょっとしたチャット返信や資料確認のためにパソコンを開くことも業務の一部です。日本のビジネスパーソンにとって業務とプライベートが曖昧な文化があることで、隠れ残業が増えています。
日本の『隠れ残業』の実態
日本国内のビジネスパーソンの半数以上が「隠れ残業をしたことがある」と回答しているアンケートもあります。「ZAC」を運営する株式会社オロ様の取得データによると、67.9%が納得して残業を行っているが、42.2%が「隠れ残業」を行っています。
本データはZ世代と言われる20代の906名から取得したアンケートであり、生産年齢人口ではあるが、管理職が多く含まれているとは考えにくい。30代〜40代以上の管理職が含まれる年齢帯ではより多くのビジネスパーソンが隠れ残業を行っている可能性が高くなっています。
《グラフ1》n=906、出典:株式会社オロ, 2023年7月16日,Z世代の「残業時間」に関する実態調査
次に《グラフ2》では、1か月あたりの残業時間についても調査を行っている。『働き方改革』により月40時間以上の残業が抑制されているが、41時間以上の残業を行うビジネスパーソンが54.9%もいることがわかる。つまり、隠れ残業を行う可能性は半数以上のビジネスパーソンであり得ます。
《グラフ2》n=906、出典:株式会社オロ, 2023年7月16日,Z世代の「残業時間」に関する実態調査
今後は『隠れ残業』への対応や対策を行い、健康的な経営をすることを企業が求められています。
『隠れ残業』の問題点
結論からお伝えすると、隠れ残業には様々なリスクがあります。
まず、労働基準法にかかわるリスクです。「何時間働くと、長時間労働か」「どこから隠れ残業になるか」の定義があります。決して、民間企業やビジネスパーソン個人の判断に委ねられているわけではないのです。これらのリスクについては、労働基準法における労働時間の基準や厚生労働省の見解を踏まえて解説しています。
また、法律的な側面以外にも、健康やモチベーションといった社員の身心にかかわるリスクや、業務工数の把握が難しくなるといった実務上のリスクも存在します。
まずは隠れ残業の様々なリスクを正しく把握しましょう。
《 法定労働時間 》
“労働基準法”という日本の法律で定められている労働時間です。労働時間は法律上で以下のように決められています。
労働時間は、「原則として1日の勤務は8時間、1週間で40時間以内で収めること」、休憩時間は「勤務時間が6時間以上で45分、8時間を超える場合、1時間以上とること」と記載があります。また、休日は週1日の休日または4週間で4日以上の休日」与えられなければいけないです。
有給休暇は6ヶ月以上勤務かつ8割以上出勤した従業員には10日を与えられます。*勤続年数1年増えると、+1日、3年6ヶ月以降+2日されます。
《36(サブロク)協定》
業種や職種によっては時期やタイミングによって休日が十分取れない場合があります。その場合は、36協定によって法定労働時間を超えて、業務を行うことができます。*36協定は、労使による協定および所轄労働基準監督署への届け出が必要です。業種や法定労働時間をどのくらい超えるのか(日ごと・月ごとなど)を明確にして提出しなけばいけません。
しかし、現在は労使合意がある場合(特別条項)でも、以下のことを守らなければなりません。
・時間外労働は年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満
・時間外労働と休日労働の2~6ヶ月平均が、すべて80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで
つまり、月残業は45時間以内に収めることが基本です。40時間以上の残業が申告されている場合は要注意です。その会社では、サブロク協定を超えて、隠れ残業をしている・させている可能性が高いです。これは立派な法律違反となりますし、事故につながります。
日本では、労働時間中のストレスが原因で労災認定される事故が増加しています。業務によるストレスの主な原因には、長時間労働と密接にかかわるタスク量や、残業を申告できない対人関係にあると言われています。
令和3年のストレスに起因する労災補償の支給決定件数は、629件です。総決定件数が約2,000件となっているため、約1割を占めている計算です。ちなみに令和3年の請求件数全体は2,346件に上り、過去最多となっています。ストレスの原因の多くは、長時間労働であり、残業を申告できない隠れ残業も大きく関わります。
《心と体の健康が害される》
隠れ残業が常態化すると、会社側が業務を減らすなどの対処を取ることもできないため、従業員の深刻な健康被害につながる可能性があります。
長時間労働は、ストレスの蓄積や睡眠不足を招き、うつ病や心臓病などのリスクを高めます。また、社交活動や趣味の時間が削られることで、生活の質が低下し、仕事に対する意欲や業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
《業務量を把握できなくなる》
隠れ残業が続くと、管理者は実際の業務量を正確に把握できなくなります。これにより、業務の過剰な負荷や無駄な作業、効率の悪いプロセスが見過ごされることになり、適切な人員配置や業務の割り振りができなくなるほか、組織全体の生産性が低下する原因ともなります。
《会社に対する評価やモチベーションの低下を招く》
隠れ残業は従業員の会社に対する満足度が低下を招き、結果として組織に対する評価も下がります。残業代が支払われないことへの不満や、不公平感が生まれ、組織内の信頼関係やモラル、個人のモチベーション低下につながります。長期的には、優秀な人材の流出や採用の困難さを招く原因にもなり得ます。
『隠れ残業』の3つの原因
隠れ残業への対応や対策を行う前に、隠れ残業の原因を特定することが最も重要です。本質的な原因を特定しない限りは、残業が増えるばかりです。
隠れ残業が発生する原因は主に3つです。
それは、『労働時間の厳しい制限』『一人当たりの業務量増大』『労働時間管理の不透明化』と言われています。本章では主な原因について詳しく解説します。
1.労働時間の厳しい制限
労働時間の厳しい制限が第1に考えられます。先に示したサブロク協定や労働基準法の改訂により、時間外労働の上限に規制がかかり、労働時間を減らすことが求められています。職場では規定時間以上の作業ができないように、PCの強制シャットダウンや消灯時間を取り決めるなどの取組みが見られます。
しかし、実際に業務量が減らないケースが発生します。自宅用に会社支給のノートPCを持ち帰ったり、朝早く出勤したりするようになり結果的に業務環境や時間をずらすことにしかなりません。つまり実質的に残業時間の減少には繋がっていないのです。
“強制的に労働環境や時間を制限すること”は、隠れ残業が増えることになります。
2.一人当たりの業務量の増大
一人当たりの業務量が増大していることも隠れ残業が増える原因になります。
昨今、日本国内の企業は賃上げを呼びかけています。その影響もあり、厳しい売上目標やコスト削減結果を求められているようです。そのような背景もあり、規定労働時間内に売上目標をや成果を出すことが困難となり、休日に雑務をこなしたり、間接業務への対応を深夜に行ったりしてしまいます。これが隠れ残業を発生させています。
隠れ残業をさせないために、各社員の生産性を把握し、適切なタスク量を分配する必要があります。ビジネスパーソンの負担を軽減するためには適切なタスク量の把握、分配がヒントになりますね!
3.労働時間管理の不透明化
最後に労働時間管理の不透明化が原因として挙げられています。テレワークや在宅勤務、ワーケーションなどの制度や文化が広がることで、”オフィスで仕事する”という常識が崩れました。
従来はタイムカードやセキュリティカード、そして勤怠打刻システムによって労働時間を管理できなくなっています。テレワークの普及によって、プライベートと仕事の境界線が曖昧になっていることも事実です。
日本国内の企業では、テレワーク化において社内の業務ルールや労働時間の制限が適切に立てられておらず、結果的になんとなく仕事を続けることがビジネスパーソンの中でも多くなっています。
いかがでしたでしょうか?
どれか一つでも思い当たる節があると隠れ残業が発生しているケースが考えられます。
しかし隠れ残業の原因1〜3までは定性的で透明性が低いです。そのため原因を明確に把握するための方法があります。
今すぐできる!『隠れ残業』を防ぐ3つの対策
先の章で3つの原因について解説しましたが、会社経営者や幹部、そしてバックオフィスに従事する方でも対策を行うことができます。
1. 適切な労働時間を細かく把握する
企業と社員が考える労働時間には大きな乖離があります。社員は、「メール1通返すくらいは残業ではない」「チャットの返信は業務ではない」と思っている場合があります。認識の違いが、隠れ残業を増大させています。
適切な労働時間を把握するためには、業務中であることを随時報告しやすい環境整備や、タスクの処理時間を見積り、振り分けを行うことが解決策です。しかし、実際には環境整備や社内のルール整備、タスク整理によっては根本的に解決しません。それは報告や整理自体にも業務時間が発生し、結果的にルーティンワークを圧迫するからです。
PCや携帯の使用時間をモニタリングする方法もあります。PC操作を行うと作業ログが残ります。その作業ログから”実際にどの程度、勤怠報告と乖離しているかを従業員自身が把握し、少しずつ抑制してもらうことが効果的です。
2. 余裕を持たせた成果目標を共有する
厳しい納期や売上目標を設定することで隠れ残業が増大します。「明日までに終わらせてほしい」「売上目標を達成できない場合は、ボーナスの減額もあり得る」この言葉がオフィスで行き交うだけでも社員は残業をせざる終えなくなります。
20代の社員の多くは、「自己成長のために今は仕事を頑張る必要がある」30代〜40代の社員は「家庭のために自己を顧みず、仕事に集中する必要がある」といった価値観が強く根付く日本社会では、隠れ残業を増やし、大きな事故につながります。
解決策としては、、社員個人個人の現在の能力を可視化し、適切な目標設定をしてあげることです。
しかし今回も根本的な解決には至らないケースもあります。それは、自身のタスク処理能力や能力を可視化することが難しいからです。1.と同様に、社員が使用するPCや携帯の作業ログ(履歴)などでは1時間、1ヶ月あたりにどの程度タスク処理を行うことができたかを客観的に把握できます。
「集中すればもっと早くできる」「今回の仕事はなんとなく難しかったから時間がかかった」このような定性的な判断から定量的かつ客観的に判断ができます。
3. 様々な環境に応じて労働時間を管理できる仕組みを作る
タスク内容や対応時間を把握することは重要ですが、テレワークや在宅勤務が普及していることも事実です。
ダメな例を挙げます。「対応社員Aのタスクが増えすぎていたため、社員Bにタスクを付け替えたが、結果的に社員Bの労働時間が増え続けた」
タスク内容や対応時間は把握できたが、根本的な労働時間の軽減には繋がっておりません。もちろん社員Bがタスク処理を行ったことで、売上が上がった場合は会社経営としては成功と言えます。しかし、本質的な労働時間が増え、隠れ残業が発生するケースは解決されていないです。
テレワーク環境で仕事をする社員が増えたことによって、労働時間をリアルタイムで管理し、隠れ残業をすぐに防止する仕組みが必要です。そして誰がタスク処理を行うにあたって適切な人材であるかを特定する必要もあります。
いかがでしたでしょうか?解決策があったとしても、社員の業務の可視化(把握)を適切に行い、客観的かつ定量的に判断できないと会社の文化は改善されず、労働時間の付け替えが発生するだけです。
次章では、『社員の業務の可視化(把握)を適切に行い、客観的かつ定量的に判断できる』ツールをご紹介します!
隠れ残業への対策ツール「みえるクラウド ログ」
リモートワークリサーチが推奨するツールは「みえるクラウド ログ」です。「みえるクラウド ログ」は、社労士事務所を持つ、大手士業セブンセンスグループのセブンセンスマーケティング社が提供しています。「みえるクラウド ログ」によって解決できることは隠れ残業の可視化と軽減に繋げる定量的なエビデンスを揃えることができます。
《みえるクラウド ログの主な機能》
・社員のPC起動時間の把握
・社員の業務内容の可視化(PC画面キャプチャ)
・会社や部署、プロジェクト、個人ごとのタスク対応時間や内容の把握
みえるクラウド ログはPCの操作ログを記録するだけではなく、操作ログを整理し、管理者にとって判断がしやすくなるダッシュボードを展開しています。*オンライン / オフライン問わず、操作ログを記録することが可能なため、Office365のようなオフライン環境下で編集ができるソフトも操作ログを取得します。=オフライン環境下での隠れ残業を防止
主な機能を解説します!
1. 正確な労働時間の可視化・把握
全社員のログイン・ログオフをひと目で把握 できるようになる。また、PCの起動状況を記録に残し、起動回数・ 時間の算出が可能。これまでタイムカードや勤怠打刻システムによって労働時間を管理していた社内体制以上に客観的かつ漏れなく業務時間を把握できます。
2. セキュリティ対策
操作履歴で「いつ、どこで、だれが」操作したか 確認できるため、誤操作や管理ミス、二次被害 も防止できる。また、現在の作業内容も記録される。テレワークが普及したことで、自宅環境での情報漏洩や社内ルールの逸脱を防ぎます。
3. 隠れ残業 対策
時間外の稼働状況や休日出勤を把握し、社員の 健康への影響をストレスの蓄積を未然に防ぎます。
4. タスク内容と対応時間の可視化→改善
これまでの1〜3の機能で蓄積された定量的なデータにより、プロジェクトやツールに対してメンバーごとの対応時間がみえる。結果として、部署、プロジェクト、役職・役割(社員)別にタスクの最適化が図れるようになり、組織全体の改善につながります。
タスク内容と対応時間の記録を蓄積させることで以下のようなメリットを得られます。
・特定タスクにおいて得意・苦手な社員を把握できるため、役割分担の判断材料となる
・土日の休日残業や平日の深夜残業を把握し、勤怠システムとの乖離を可視化できる
・隠れ残業をした社員を特定するだけではなく、隠れ残業の内容を把握できる
いかがでしたか?
“隠れ残業を軽減させる対策のためには社員のタスク内容の可視化”を初めてみてください。
少しでも興味をお持ちの担当者様やクライアントの皆様は、ぜひ無料資料のダウンロードください。在宅勤務時の環境整備からリモートワーク時の監視まで一から進め方を説明しております。